関東国際高校の新しい教育プログラムに期待
「人は食べなければ生きてはいけない」「あなたの身体は、あなたが食べたものからできている」こんなことを忘れてしまった人が多くなってしまった現代、「大根の種子はどこにできるの?」「里芋はどんなふうにできるの?」という問いに自信をもって答えられる人はどれくらいいるでしょうか。これは、子どもに限ったことではありません。大人だって、学校の先生だって「???」と頭を抱えてしまう場合があるのが現実です。
このような状況は、都市化の進行によって生じた弊害の一つであり、農(業)の現場に接する機会を失ったことにより、生きるための基礎となる学びが一杯詰まった体験学習の機会を失ってしまったことにあります。しかし、嘆いてばかりいられません。大きく変貌している社会の中で、持続可能な社会を創出し、グローバル化に対応していける人材を養成していくためには、世の中が変わっても、何時の時代にも、何処の国に行っても変わらない教育、すなわち人が生きるための基礎となる教育、すなわち農が有する豊かさを学ぶことができる教育が今、見直され始めています。
1994年から恵泉女学園大学において教養教育としての生活園芸の教育プログラムを担当してきた経験から、自然共生型の有機園芸には人を育てる大きな力が備わっていることを痛感し、初等教育から高等教育まで全ての教育課程において、自ら土を耕し、タネを播き、命を育み、それを食する菜園教育を展開するべきであると訴え、取り組みやすい菜園教育プログラムを提案してきました。このプログラムについては2007年度に文部科学省の特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)に選定されている。関東国際高等学校が重要な教育プログラムとして農園実習や生活園芸実習を積極的に導入されたことを大変うれしく思います。
恵泉女学園大学 澤登 早苗(勝浦ファームアドバイザー)
勝浦研修において農園実習を行う意義
- 自ら食べ物となる作物を育てる体験は人間力を育む、個性を育てる基礎となる
- 有機農業は、循環、共生、多様性を基本としているため、多様な関係性(人と人、人と他の生き物、人以外の生き物同士)に目を向けることが可能となる。田畑でも社会でも多様な命が、違いを認め共生していくことで、バランスが保たれることを実感できる。
- 自然と共生する農業は、人間が生きていくための食料生産のための他の生き物を犠牲にしない農業であること。そこから収穫されたものを食べることで環境を守りながら、自分の健康も維持できることが実感できる。
- ハーブなど省力栽培可能な植物を用いたガーデンをクラス単位で設計・植え付け・管理することで、チーム力を培うとともに、植物が育った姿を想像する力、その場の状況に応じて対応する力が養われる。また、植物は人の助けがなければ育たないのではなく、必要な時に必要な手助けを行うだけで植物は育つこと、そのためには観察力が必要であることを体感できる。
- 「勝浦ファーム」の体験で人間力を育み、個性を育てる。自然と共生する農業体験で自ら収穫した作物を食べることで、環境保持と健康維持の重要さを実感し。また、ハーブ等のガーデンを各科・コース単位で管理することで、社会で必要とされるチーム力を養う。